
私が子どもの頃、最も好きだったお菓子の一つに、「チョコボール」があります。
金のエンゼルを1枚、銀のエンゼルなら5枚集めると「おもちゃのカンヅメ」が漏れなくもらえるというCMも頻繁に見た記憶があります。
今回は、この「チョコボール」という商標をめぐって争われた訴訟をご紹介させて頂きます。
ご存じの通り「チョコボール」は、森永製菓から発売されているロングセラー商品で、1965年から「チョコレートボール」の販売を開始し、1969年に名称を「チョコボール」に統一して今日まで販売を継続してきました。その後、森永製菓は、2008年に「チョコボール」を商標登録しています。森永製菓は、名糖産業から「徳用チョコボール」というアイスクリームが発売されているのを知り、2009年「徳用チョコボール」の販売差し止めや6千万円の損害賠償などを求め東京地裁に提訴しました。
これに対し被告の名糖産業は、明治製菓の発売以前の1959年から「チョコボール」という商品名を使用し販売しており、世間に広く認知されているため、引き続き商標を使える権利(先使用権)があるとして、商標権侵害にはあたらないとし全面的に争う姿勢を見せました。
商標法は、登録主義をとっているため、未登録の商標については商標権が発生せず、保護されないのが原則です。しかし、たとえ未登録であっても、企業努力により蓄積された信用は既得権として保護すべきであることから、商標法は、登録主義を貫くことにより生じる取引社会における不公平な結果を回避し、未登録の周知商標を保護するために、一定の条件の下に、先使用による商標の使用を認めることとしています。
先に商標登録した者が勝つのか?先に商品を発売した者が勝つのか?というお話ですね。
皆さんは、この裁判の結果がどうなったか?どのように想像されますか。
ちなみに、森永製菓は、この「チョコボール」という商標を取得するのに、とても長い時間を要しています。森永製菓が「チョコボール」の登録を出願した日は2004年5月25日ですが、商標として登録された日は2008年7月11日です。出願から登録まで、4年以上かかっています。これは、「チョコボール」の出願について、2005年に一度、商標としての登録を認めないとする特許庁による拒絶査定が出され、その後、それに対して森永製菓により不服が申し立てられ、査定不服審判を経て、登録が認められたとういう経緯があることによります。
その商品・サービスに普通に用いられる名称やありふれた氏・名称、産地や品質・形状などを表示したに過ぎないものなどは、識別力がないものとされ、商標として登録することができません。森永製菓の出願も、最初の査定では、「チョコボール」は品質・形状などを表示するに過ぎないとして、特許庁から登録できないとする拒絶査定を受けたのでした。やはり、このような記述的商標の登録は難しいことがわかります。しかし「チョコボール」については、その商標使用により需要者が森永製菓の商品であることを認識できるものであるとして全国的に周知されているとして、3条2項の適用を受け登録が認められました。全国的に周知されているというのが大きなポイントなんですね。
前置きが長くなりましたが、後日アップさせて頂くコラムにて、この訴訟の結果がどのように展開されるのか?私見も交えて解説させて頂きます。