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お菓子の商標(2)

2025.07.24
お菓子の商標(2)

以前のブログにおいて、「チョコボール」とういう商標をめぐって、森永製菓と名糖産業という一部上場企業同士が争った訴訟についてご紹介させて頂きました。

この訴訟の結果については、どちらが勝訴するか?専門家の間でも意見が分かれていたようですが、ネットなどでの情報を拾い読みすると、商標登録を行っていた森永製菓が有利とする見解が大半を占めていたように思います。さてその結果ですが、当初、裁判は長引くのではとの見方もあったのですが、実は、2012年3月30日付で「和解」という結論に至りました。「和解」ですので、判例には残らないため、名糖産業が和解金を支払ったのかどうかなどの詳細については想像するしかありません。

ただ、私は、以前からこの訴訟について少し違和感を感じていました。それは、森永製菓は、提訴するにあたり、名糖産業から発売されている「徳用チョコボール」の存在を2009年に初めて知ったと主張しています。同じ菓子業界で仕事をしていて、しかも相手は上場企業であり、商品はホームページにも堂々と掲載されているのに、該当の商品を2009年に初めて知ったということがありえるのか?と率直な疑問を持ったのです。「チョコボール」が商標登録されたのが2008年ですので、その翌年に初めて知ったという事になります。森永製菓ほどの大企業であれば知的財産部門の担当者も当然いるでしょうから、少なくともその担当者が知らないはずはないと思うのですが、、、、。

森永製菓の社内においても、「先使用権」のことは当然認識していたでしょうから、この訴訟は勝てるのか?と大いに議論されたことでしょう。森永製菓側からすると、商標登録を一度拒絶査定され、拒絶査定不服審判を経てやっと登録が認められるなどかなりの時間と労力を要しました。また、その商標が認められるにあたっては、全国的に周知されているという判断がなされた上での結果でした。全国的に需要者から周知されるまでCMなどで莫大な広告費を費やした事でしょう。このような経緯から森永製菓にとっては、「負けられない戦い」だったと想像します。結果、「和解」ですので、森永製菓にとっては訴訟に負けた訳ではなく、また「チョコボール」のブランドが大きく損なわれた訳ではないので、会社として大きなダメージはそれほど無かったのかも知れません。

逆に新商品が日進月歩で開発される競争の激しい菓子業界の中で、このロングセラーの商品が今回の訴訟によってクローズアップされたという点は、逆に喜ばしいことであったのではないかと感じるのは私だけでしょうか。

ちなみにその森永製菓の「チョコボール」ですが、2010年の年末頃から2015年の夏頃まで売り上げが急落しました。競合他社が競合商品である子ども向け菓子を発売した事が原因とされています。競合商品は子どもに大人気のキャラクターを採用した商品で、テレビCMも大々的に展開。ピーナツやビスケットをチョコレートでコーティングしたお菓子で、縦長の箱型のパッケージ入りでくじ付きなど、チョコボールと非常に類似した商品だったようです。森永製菓も考えられるさまざまな対策を試みたそうですが結果は芳しくなく、4年以上も低迷し続けたそうです。

しかし、その後、奇跡のV字回復を果たします。これまではお菓子を食べる子ども向けにマーケティングを行っていたそうですが、お菓子を買い与えるのは大人ということで、大人の購買層を意識し、「大人に贅沢チョコボール」が14年6月にコンビニで先行発売されると、「あのチョコボールから大人向け商品が出た」とSNSで話題になり売り上げはV字回復したのでした。中でも、「大人に贅沢チョコボール厳選ピーナッツ」は、甘さを控えたマイルドビターチョコを使用し仕上げられており、お酒との相性も良いと高評価です。森永製菓は、この新製品の開発・発売により更なるブランド力の向上を達成しましたが、過去、苦労して商標登録を取得した成果がここに結実したように思います。ちなみに「チョコボール」ファンだった私も、このキャッチ―なネーミングに誘われ新商品を買ってしまったのは言うまでもありません。

商標登録の事で何かご不明な点がございましたら、ご遠慮なく私ども奈良特許事務所にご連絡下さい。

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