
みなさんもお土産などとして「千鳥饅頭」をお世話になった人に持参することがしばしばあるかと思います。万人受けする定番の手土産ですよね。その「千鳥饅頭」ですが、千鳥屋本家・千鳥饅頭総本舗・千鳥屋宗家の3つの違う店舗で販売されているのをご存じですか?また、この3つの違う会社から「チロリアン」という洋菓子が販売されていたことをご存じでしょうか?今回は、その千鳥屋そして「チロリアン」にまつわるトラブルについてご紹介させて頂きます。
※千鳥屋宗家は、「ザプレミアムチロリアン」という名称で販売。
ー千鳥屋の歩みー
千鳥屋は、1630(寛永7)年に現・佐賀市久保田町で創業。当時は「松月堂」の名称で、丸ボーロやカステラを専門につくっていたそうです。その後、筑豊炭田で賑わっていた飯塚に目を付け、1927年に松月堂の支店として「千鳥屋」が開業されます。39年には佐賀の松月堂を閉じ、飯塚の千鳥屋を千鳥屋本店として新たなスタートが切られます。飯塚進出とともに考案された「千鳥饅頭」は、過酷な肉体労働で甘い物を必要とした筑豊炭田の炭鉱労働者や、故郷への土産物として好評を博します。1949年には福岡へ進出。飯塚市と福岡を中心に店舗網を形成してきました。
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ー「チロリアン」の誕生ー
着実に業績を伸ばしてきた千鳥屋ですが、1962年には、「千鳥饅頭」に次ぐ看板商品となる「チロリアン」を開発し発売を開始します。この「チロリアン」は、オーストリアのチロル州に古くから伝わっていたロールクッキーをアレンジして作られた洋菓子で、発売するや大変なヒット商品となり、九州地域では子供のお誕生日会のお土産は決まって「チロリアン」という時代もあったそうです。この「チロリアン」のヒットもあり、千鳥屋はさらに事業規模を拡大していくことになります。
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ー事業拡大と息子たちへの暖簾分けー
大きく事業拡大に成功した先代の女性経営者は、1954年に夫と死別しましたが、5男・3女の子宝に恵まれていました。3人の娘さん達は、それぞれ嫁いでいきましたが、夭折した4男以外の4人の息子さんは、千鳥屋の事業に従事します。先代の女性経営者は「身内の争いは信用を落とす最大の要因。兄弟間の争いは絶対に避けなければならない。」と考え、4人はそれぞれ営業エリアを分けることにします。長男が東京地区、次男と五男は福岡・九州地区、三男は関西地区と、異なる3つの営業エリアで別々に3つの法人を立ち上げます。その後、次男と五男が担当していた福岡・九州地区でさらに分立し、結果的に4つの法人に分かれて事業展開することになります。なお、長男が携わった東京の千鳥屋総本舗は、売上低迷や原材料価格の高騰などの影響で経営が悪化し、2019年に廃業しています。この結果、飯塚市に千鳥屋本家(五男)・福岡市に千鳥饅頭総本舗(次男)・関西に千鳥屋宗家(三男)の3つの会社から、それぞれ「チロリアン」が発売されていた訳です。
※千鳥屋宗家は、「ザプレミアムチロリアン」という名称で販売。
ー3人の息子たちによる交渉ー
1995年12月に一時代を築いた先代の女性経営者が亡くなると、不動産資産をめぐる相続争いが勃発します。その影響もあってか、いち早くヒット商品である「チロリアン」の商標登録をしていた次男率いる千鳥饅頭総本舗は、「チロリアン」の商標権を侵害されたとして、5男の「千鳥屋本家」に名称の使用中止や損害賠償を求め提訴します。
また、この訴訟の前には、関西を拠点にしている三男の千鳥屋宗家が、福岡の千鳥饅頭総本舗に対して、関西地区での販売差し止めなどを求め訴訟を提起していました。同じルーツを持つ企業同士、全国でうまく販売を拡大できるよう、営業エリアを分けていたにも関わらず、その合意を破り、「チロリアン」を販売したというのが千鳥屋宗家側の主張でした。一方で、千鳥饅頭総本舗側は「法的拘束力がある契約として承諾したことはない。」などと反論していました。
この販売エリアをめぐる宗家と総本舗の争いですが、大阪地裁は、宗家側の訴えを棄却。「兄弟間で互いの事業に口出しをしないと合意したにすぎず、販売地域の競合を避ける合意があったとは認められない」と判断しています。
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さて、本題の本家(飯塚)と総本舗(福岡)による「チロリアン」の商標権侵害の訴訟は、どのような結果になったと思われますか?
本家が商品名を「ヨーデルン」に変更し、本家から総本舗に5000万円を支払うことで和解したそうです。
高額な支払いは避けたいところですね。
あらかじめ避けるには、登録した自己の商標を使用するのが手っ取り早いです。
商標登録は奥が深く、実際に自分で手続きした方の多くが「難しい」「手間がかかる」などと感じているが、スムーズに申請したいという方は、是非、私ども奈良特許事務所にご相談下さい。